はじまりは、伊藤若冲(細見美術館)
若冲中心の細見コレクション展を見に行った。若冲の名前が入っているから、それなりに混んでいるかな? と思ったけど、気温が低いせいかコレクション展なせいか、人は少なかった。じっくり見ることができて良かった。
開館20周年記念展Ⅰ 細見コレクションの江戸絵画 はじまりは、伊藤若冲 | 開催中の展覧会 - 京都 細見美術館
リンク先に100円割引の優待券がある。私は気づかなかったので、使ってないけれど。
続きを読む『西郷どん』斉彬の「未来人」ぶりについて思ったこと;倫理学概論に話が飛ぶ
過去二年の『真田丸』と『おんな城主直虎』が意図して出さなかった「未来人」が、『西郷どん』では島津斉彬において復活した。
ドラマを見ながら、twitterのみなさまの実況を追っかけていたのだけども、いわゆる「これから先は~」的な未来予知のような将来を語る人のことを「未来人」と言っていて、言い得て妙だと思った。
twitterでの「未来人」発言を見る前に、斉彬の「侍がふんぞりかえって刀を持つ時代は終わる」というセリフを聞いたとき、私はかなりがっくりきた。正直、過去二作を見たあとだけに、こういう人物が大河ドラマに出てくることに違和感を覚えたほどだった。
でもtwitterにもあったように、以前の大河ドラマではこういう人物がでてくるのがむしろ当たり前だった。過去二作は大きな時代の流れに翻弄されながらも懸命に生きていく人々であったのに対して(歴史のなかでは脇役)、幕末は時代の流れのなかで色んな立場の人が次々と表舞台に立っては消えてゆくような激動の時代なので、流されていくというよりも時代を切り開いていくような人物が多い。多少先進的な目で世の中を見ていてもおかしくないどころか、視聴者からすれば現代的価値観で動く人物のほうが見ていて安心できるのかもしれない。
それでも私がそれに乗り切れず「あ~あ~」と思ったのは、その人物の作り方に共感できなかったせいだ。
『真田丸』と『直虎』が良かったのは、私たちにわかりにくい当時の価値観に忠実に動いていたからではなく、当時の価値観を踏まえた上で、主人公たちが自分たちの経験の範囲で感じたり学んだりしたことの普遍性をうまくドラマにしたことだった。それが丁寧に描かれていたから、翻弄されながらも一生懸命生きてきた彼らの物語にのめり込むことができたのだと思う。
『西郷どん』は、ぽっと出てきた斉彬を掘り下げていないし、彼が主人公なわけでもない。西郷に影響を与えた人物として「未来人」的発言をしているので、そういうキャラクターなのだと言えばそうなのかもしれないけれど、2話3話と続けて見て、あまりにもみんなが斉彬頼み、スーパー斉彬な扱いにちょっと「うへぇ」となっている自分がいる。
倫理学概論のテキストは、ヘーゲルの人倫を中心に倫理について書かれているのだけど、それによれば人の倫理は習俗から共同体を経るときに主体的自覚が必要ならしい。このテキストに書かれていること自体、実はまだよくわかってない上に、私自身納得していないのだが、斉彬を見たときの違和感が、このテキストにある倫理観に対する違和感とよく似ている。
それは、斉彬が「あるべき日本の姿」を思い描いていることそのものが、西洋の倫理観にすごく近いのではないかということである。
倫理学概論のレポートは、テキストを参照しつつほとんど『菊と刀』を読んで書いた。徳のジレンマという章には、西洋と日本の善に関する違いについて書かれている。良いこと(善)というのは「家族」という場においても「市民社会」という場においても「国家」という規模になっても変わらない、というのが西洋の考え方だ。だから「あるべき理想の姿」というのを思い描ける。しかし日本においては、孝と忠がぶつかるということがしばしばあり、そのことに対してルース・ベネディクトは全く納得していない。
この違いをうまく形にできなくてずっとモヤモヤしていたのだけども『道徳を基礎づける』を読んだときに、そのモヤモヤを解決する一端を見つけた。孟子の、善の波及効果みたいな考え方が、私の考える日本人の倫理観をかなり明確に説明していると思ったからだ。
話を斉彬に戻すと「習俗」を離れて「共同体」「社会」へ進む際に、幕末の日本において、倫理的な主体的自覚というものが作られるような環境に斉彬があったとはちょっと思えず、しかし「これからの侍は~」発言は明らかに次期藩主としての斉彬の倫理観から出た言葉であるのは間違いないように思えて、もやっとしているわけなのである。
そして今思ったのだけど『西郷どん』の斉彬は「ケン・ワタナベ」感が強すぎるってことなのか?! 主体とかいう以前にさ。
道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ (講談社学術文庫)
- 作者: フランソワ・ジュリアン,中島隆博,志野好伸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/10/11
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図書館で借りて読んだ(新書のほう)後に、学術文庫で出たので有難くて買ってしまった。ゆっくり読み込みたい。
哲学演習Ⅱ(2回目)
思い出して書く。
単位取得方法
スクーリング積み重ねのみ。
授業内容
今回はメディア授業を受講した。この演習が合格すれば単位が完成する。しかも内容が、卒論制作に向けての授業なので私にとっては時期的にも有難い演習だった。
私が入学した頃は、メディアの哲学演習はカントを講読していたはずなのだけども、担当していた教授(カントを専門とされていた)が亡くなられたので、代わりの先生が半年ほど担当され、最近になって卒論制作へ向けての授業にリニュアルされた。
最初の課題は、テーマを決めること。問題、主張、論拠の提出だった。
夏の卒論指導で私が興味あったのは、疑似科学だったのだけど、岩波の『哲学・思想辞典』で項目を追っかけていった結果、疑似科学→懐疑→推論と興味の対象がスライドしていって、パースのアブダクションに行きついた。 このパースのアブダクションを論拠に、自分の主張をのせて、何を問題としているのかを考えてまとめた。
値段はそれなりにするけれど、哲学科に入ってから割りとすぐに買った本。正直、すごく役に立っている。
次の課題は、参考文献表を作ることで、パースに関する本を調べて書いた。読まなくてはならないのだけど、なかなか進まない。
課題3は、パラグラフを意識しながら要約を作ることで、私はパース論文集の中から選んで要約をした。課題3は多分、今回の演習のなかで一番大変な作業なのだけど、パースの論文に関していえば、パラグラフのお手本みたいな文章で、要約が易しい部類だったと思う。
最終課題は、アウトラインを作ることだった。私にはこれが一番やっかいな感じだった。どこまでを説明的に書けばよいかわからなくて、すごく詳しい項目もあれば、目次のタイトルだけ、みたいなところもあって、バランスが悪かったと思う。あと、メディア授業を受けている2か月の間に、最初に作った問題と少し違ったもので提出した。パースを扱うというところは全く変わっていないのだけど、アブダクションではなく可謬主義のほうに私の主張したいところがある気がして、変更した。
合否はまだ出ていない。提出物は全て出したので、成績は問わないからとりあえず合格させてほしい。 合格した。良かった。
夏に返却された卒論手帳は、メディア授業でやったことほとんどそのままの内容のこと(問題、主張、論拠、参考文献表、アウトライン)を提出せよ、とあったので、年明けに若干の修正を加えて提出した。1か月後くらいには返却されるだろうか。それまでに本を読んでおかないと。
日本政治史
思い出して書く。
単位取得方法
レポート(分冊1)+レポート(分冊2)+夏期スクーリング(併用)
レポート課題
分冊1は、戊辰戦争について。分冊2は、ニクソン・ショックと日中国交正常化の関係について。二つとも合格した。
戊辰戦争は、教科書では流れがちょっとわかりづらくて、『図説 戊辰戦争』が参考になった。
分冊2で参考にしたのは、この新書。
日中国交正常化 - 田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦 (中公新書)
- 作者: 服部龍二
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/05/25
- メディア: 新書
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授業内容
若い先生だった。ひげが整えられていて、それだけですごくオシャレだとわかる。三日間ずっと、まめだな~と思って感心して見ていた。
シラバスは、昭和前期の日本政治。昭和の20年間をざっくりやった。詳しくないので、出来事を追うだけでいっぱいいっぱいで、理解できたとはなかなか言いがたく、苦労した。パワポでさくさく進んでいく。
このとき、出来事と退陣理由がまとめられた内閣一覧表が配られたのだけど、スクーリングが終わって、戦争ものの番組を見ているときに、引っ張り出して参照していた。すごく便利。
あと、どれだけ私がこの時代の歴史に疎いかというと、関東軍を40になるこの年までずっと、日本の関東地方を守っている軍だと思っていた。 勘違いって直される機会がないと、最初のイメージで突っ走るんだね。例え40歳でも気づいて良かった。
1日目、2日目に小テストがあり、3日目に最終試験があった。ノートのみ参照可で、印刷物の持ち込みは禁止。
珍しく電子辞書を持ってきていたので、重要語句はホテルで調べてノートに書きだした。理解の手助けにはなっているけれど、あまり試験には関係しなかったかも。合格はした。
この授業でおススメされた本は、『8月15日の神話』
9月2日が降伏文書調印の日なのに、なぜ8月15日が終戦記念日になったのか、という内容らしい。読んでないし買ってもいないけれど、気にはなるので、ここの書き残す。
増補 八月十五日の神話: 終戦記念日のメディア学 (ちくま学芸文庫)
- 作者: 佐藤卓己
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/12/10
- メディア: 文庫
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科学哲学
思い出して書く。
単位取得方法
スクーリング積み重ね。
夏期スクーリング(4年目)+夏期スクーリング(5年目)
配本申請して、レポートを書く気でいたのだけど、課題がよく理解できなかったので、時間をかけたくないと思って、積み重ねにした。お金はかかるけど、仕方ない。
授業内容(1)
3日間集中の夏期スクーリング。教科書はこちら。
科学哲学を履修したあと、教科書がよく理解できなくて、入門として購入して読んでいたので、スクーリング前に再読した。授業でやったのは、第3部。
とはいえ、1~2部を踏まえた上での3部なので、一応1~2部もさらっとやってから3部に入る。
興味深かったのは、14章の「科学技術」についての箇所。日本語では普通に「科学と技術」という並置で使われていて、何の疑問も抱かれていないけれど、ヨーロッパではこの二つには明確に違うものとして意図されてきた。科学は、哲学から発生しているので、理論的頭脳的なものとみなされ、技術のほうは、手仕事の伝統からなので、ほぼ労働と同じものだった。だからヨーロッパでは機械技術を大学では教えない。技術は一段下に見られていたのだ。
しかし日本では19世紀に、この科学と技術がセットで持ち込まれたために、はっきりとは区別しなかった。また、技術教育を拒否するような伝統もなかったため、総合大学でも工学部が設置されている。
3部の肝は、科学技術と公共性、倫理、社会的責任についてだった。特に3.11の原発事故について批判と提言がなされている。
この年はポケモンGOが話題になっていて、先生はちょくちょくその話もしていた。曰く、世の中に出す技術が、どういう社会的影響を与えるのかということを、企業はもっと考えなくてはならない、ということ。
試験の設問は忘れてしまったけれど、授業でやったことを踏まえて自由にテーマを設定して書いたような気がする。お昼休みにご飯を食べながら、他の学友は原発について書くと言っていた。まあ、授業でやったのはそこだから、一番書きやすいと思う。私は別のテーマで書いたけれど、合格した。
授業内容(2)
教科書は前回と同じ『科学哲学への招待』で、今回は第1部をやった。
今回は、あやふやだったソクラテス以前の自然哲学史が、すっきりわかって良かった。多元論や不生不滅の「生きる自然観」はアリストテレスに継承され、デモクリトスの原子論は「死せる自然観」だから、好まれず採用されなかったということと、「万物は数によって規定されている」というピュタゴラスの考え方が、既に科学の本質であるということ、そしてこの「死せる自然」と「世界が数学的構造を もつ」というのが科学革命でがっちり繋がった、ということがわかった。
一つ一つは知っていたつもりだったけれど、科学史の流れでそれぞれの考え方を整理されるととてもわかりやすかった。
第1部の内容は科学史なので、試験もそれに関することを書いたのだけど、設問がなんだったのか忘れた。ノートを見返す限りでは、科学史とそれに対応する人間観みたいなのを書いたみたいだ。合格した。
単位積み重ねだと、2講座の平均が成績として表に出てくるため、それぞれの成績がわからなくてちょっと困る。
今回授業中におススメされたのが、『思想史のなかの科学』だ。買ったけど、まだ読んでいない。
倫理学特殊講義(2)
思い出して書く。
単位取得方法
スクーリング積み重ねでしか取れない科目であり、夏期にしかスクーリングがない。
2年前にソクラテスで受講したが、前年は幸福論で、あまり興味がなかったのと、他の科目を優先したので、受講しなかった。
2年前の授業については、こちらに書いてある。
授業内容
去年が「個人の幸福」をテーマにしたもので、今年は「国家・社会について」である。教科書はこちら。
2~3章と、8~9章の内容を中心にやった。
人間の人間らしさを、主体性に求めるか社会性に求めるか、というのが 今回の導入で、ではどういう国家や社会が自分にとって良いのか、というのを考える。
2~3章は、アリストテレスの幸福についての定義とか、カントの道徳についての考え方などをやった。幸福になることが人間の最終目的。何のために幸福になるのか、という幸福の先の目的がないから。
個人的には、カントの道徳に対する考え方って窮屈な感じがする。
8~9章では、社会契約説をやった。ホッブズとロックとルソーの違いと流れ。
あと、ヘーゲルとマルクスをちょこっとやったけど、あまり覚えていない。弁証法的発展っていうのに、あんまり興味がなかったせいかも。
成績は、小テストが3割で試験が7割と、前回と同じ。試験の設問自体は忘れたけれど、(1)社会契約説、(2)功利主義とロールズについて、という感じでまとめてある。合格した。
事前準備学修があまりできなかったので、勉強不足だったのだけど、倫理学特殊講義はほぼ哲学の学生しかいないので、休み時間とかの意見交換がすごく楽しかった。印象に残ったのは、「幸福でない人は、幸福論について考える」ということ。
家にあった本で、持っていけば良かったな~と思ったのは、この2冊かな。
国文学概論
思い出して書く。
単位取得方法
地方スクーリング(春)+夏期スクーリング
はじめは、レポートを書いて併用でいこうかと思っていたのだけど、思っていたよりずっと書けなかったので、積み重ねに変えた。国文の必修科目なので、スクーリング回数が多いというのも、履修科目にした理由のひとつだったし。
授業内容(1)
過去のシラバスを読んでいると、日本史概説と国文学概論は、地方でスクーリングが開催されると、その土地の文学館や歴史博物館へ行くことが多い。今回は大阪だったので、大阪歴史博物館へ行った。私は昨年に引き続き2回目だ。
3日間の集中スクーリングだったので、1日目は概要を学んで、2日目に校外学修だった。
今回の授業でやったのは、難波万葉。この授業のためにはじめて万葉集を買った。教科書の指定はされておらず、全歌が収められているならどこでもよい、とのことだったので、講談社文庫を選んだ。
国文学の生徒ではないので、買ったあとは持て余しそうだ。あと、基礎知識がないので、同じシリーズの事典も購入した。こちらは、拾い読みしているだけでも面白い。
最終レポートを出すときに、この事典の年表と地名解説がすごく役に立った。
今回、初めてスクーリング中に試験がなく、後日1週間以内にレポート提出、という形での成績評価だった。次の日曜日が、西洋思想史Ⅱの科目修得試験だったので、結果的にあまりこのレポートに手をかけられなかった。合格はした。
授業内容(2)
夏期スクーリングは、江戸時代の遊里・遊女を中心に文学を読み解いていくものだった。事前学修の宿題(3作品について調べておく)があって、それをやってから授業に臨む。
夏なのと、必修科目なのとで、とにかく受講人数が多かった。
江戸の初期・中期・後期ごとの作品を読み比べて、どういうところが変化しているかを見たりして、面白かった。DVD等の映像資料が紹介されるのも良かった。
試験は、穴埋め・記述式だった。あと少しだけ論述。合格した。
授業でも使われて、私も宿題で読んだ本。わかりやすくて良かった。
- 作者: 小池正胤,杉本紀子,佐藤智子,有働裕,瀬川結美,細谷淳人,檜山裕子
- 出版社/メーカー: 笠間書院
- 発売日: 2011/12/01
- メディア: 単行本
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授業後に図書館で見かけて思わず借りてしまった本はこれ。 下ネタなんだけど、結構面白かったので、研究が進んで他に本が出てくれるといいなあと思う。
今回、授業で曽根崎心中をやってけれど、私のファースト曽根崎心中は、デッドボールPのこの曲である。
初音ミク+鏡音リンの百合ジナル曲4 曾根崎心中 -Full ver.-